HSPについていろいろ聞かれる中で、一番多いのが、HSPって病気なの?という質問でした。確かに、繊細なHSPはうつ病などにかかりやすいかもしれませんが、HSPは決して病気ではありません!今回は医師の診断を受けての解説をします。
HSPは病気ではありません!HSPは才能なんです。
前回、HSPとは?というテーマで記事を書きましたが、セミナーなどでもHSPは病気なのですか?という質問をよく聞きます。
それくらい不安に思われている方も多いのかもしれませんね。
でも、HSPはまったく病気という分類ではありません!精神医学でHSPという用語が一般的に使われていることもなく、あくまで心理学的な用語になります。
HSPとは「気質」であり、生まれ持ったものなのです。
確かに、通常よりもミラーニューロンの働きが活発であり、偏桃体の発達が見られる、という特徴はありますが、それは人よりも背が高い、ということと同じことです。
僕も最初に病院でHSPという単語を聞いたときは、「医師が言う=病気」と勘違いしてしまいました。
ですが、専門のカウンセラー先生のお話をしっかり聞いていくうちに、HSPというのは引け目を感じたり、落ち込むような病気ではなくて、むしろ誇ってもいい才能なんだよ、ということを言っていただき、すごく安心したことを覚えています。
でも、確かに、HSPの繊細さというのは他の病気につながってしまうこともありえます。
事実、僕自身も重度のうつ病、社会不安障害、強迫性障害を患い、とても苦しい思いをしました。
HSPは治す必要のないもの、というより治るという概念のない自然なものだけど、こういった精神性疾患などにつながる可能性がある、ということは覚えておく必要があるかもしれません。
そこで、今日は僕自身の体験ももとに、HSPとうつ病・社会不安障害・強迫性障害・適応障害や発達障害との違いなどについて医師に聞いた内容を解説してみたいと思います。
HSPから重度うつ病へ。苦しかった日々
HSPは病気ではありませんが、「超敏感」であるがゆえに、とても生きづらいです。
僕は子供のころから引っ込み思案で、公園で友達と遊ぶよりも一人で落ち着いて遊ぶ方が好きな子でした。
実は祖母から母、そして僕にHSPは遺伝しているため、考えてみると皆人混みが苦手で、とても繊細です。
特に、学生時代そして最初の社会人生活は僕にとって地獄でした。
HSPは「監視される」場所というのがとても苦手。
僕の通った学校というのは、まさに監視される場所、という感じで進学校だったがゆえに、「競争」と「区別」がすごく強いところでした。
そのため、いっつも授業中に緊張してお腹を下し授業を毎度抜け出してはトイレに行く・・・、
教室のワイワイガヤガヤという空気と音が大の苦手だったため、時間があれば図書館にこもる・・・、
疲れやすいからとにかくいつもぐったりしていて、土日はほとんど寝て休む以外できない・・・、
という状況でした。
僕は当時HSPという言葉を知らなかったため、「なんで僕だけこんなに疲れやすいんだろう?どうして皆は全然平気なんだろう?」とずっと不思議に思っていたのです。
でも、なんとか頑張らなきゃ!というある種の義務感と、勉強自体は嫌いではなかった、ということが幸いし、どうにか大学まで卒業することができました。
しかし、学生時代は許された「体調が悪ければ休む」「皆とつるまなくても一人でこもっていればいい」という特権は、社会人になって失われることになったのです。。。
社会人として就職したのは、一種のとある大企業でした。
就活に勝ち抜いたと言われる部類に当たるのかもしれません。
しかし、そこがとんでもなくブラックだったのです。
朝7時から勤務して、翌日朝の5時まで仕事。
地下にある雑魚寝部屋?のようなところか、会議室のソファーで2時間仮眠してまた仕事です。
土日などもなく、もちろん「出勤はしなくてよい」のですが、半ば暗黙の合意のような形で「自由に自主的に仕事に行く」という感じになっていました。
毎回朝起きたときに「このエレベーターが壊れてくれれば・・・」と思いながら上へのボタンを押す日々。
もちろんタイムカード(ウチは印鑑)は、正規の時間のみです。
今だと労基に駆け込むんですが、当時はそんな知識もないですし、就職難なのに雇ってくれてありがとう・・・こんな大企業で働けてうれしい・・・という謎?の感謝をささげていました。
考えたらきっとみんな洗脳されていたのかもしれません。
もちろん、それだけではなく、
常に監視され、トイレに行くにも毎回報告。
お昼休みに1秒でも過ぎようものなら怒られ、むしろ勤務開始前には着席して仕事を開始しておく、、、というルールでした。
朝から会議があるときは、もちろんその準備が終わっていることが前提なので、出勤時間前には既にきちんと用意しておく、というもはや出勤時間がいつなのかもわからない状態。
成績が悪ければ怒鳴られるのはもちろん、すごくどうでもいいこと、仕事とは関係のないこと(これは会社によって違いますが、今でもどうでもいいと思うほどのこと)でも怒られる始末。
競争や監視が苦手なHSPにとってはまさに地獄。
環境が悪ければ、やっぱり人間関係も悪く、皆で足の引っ張り合いや疑心暗鬼に陥っていました。
それでも、なんとかやっていけたのは、20代前半の体力とおそらく命の消耗があったからだと思います。
当時は夢も大きく(HSPは大きな理想を抱きがちというあるあるも聞いたことあります)、その野望をかなえるためなら・・・と必死でした。
しかし、どんなに気持ちがあっても体と心はついていくはずもなく、結果的に僕は適応障害になってしまったのです。
適応障害から重度うつ病へ
どういう病気になったのか?は別途、HSPと社会人生活の記事に書こうと思いますが、
不眠になり、最初に訪れた心療内科で僕は適応障害と診断されました。
医師によれば、適応障害とは「ストレスに起因する(一時的な)過剰反応」とされています。
その中に、身体症状や精神症状があり、うつ症状もそこに含まれます。
そこで処方された薬を飲んでしばらくは勤務を続けていたのですが、改善するどころか症状は悪化する一方。
結果的に起き上がることさえ困難となり、体重も40キロに落ち、見た目もがりがりの状態。
今でも当時の免許証の写真を見ると、まるで骨のようにくぼんでいてゾッとします。。
そして、自殺願望にも取りつかれた僕は、結果的に精神科に入院することになりました。
診断は「(重度の)抑うつ状態」。
そこに加えて、強迫性障害もありました。
そして、僕は一度目の社会人生活を終えることになったのです。
HSPとうつ病の違いとは?
上に見てきたように、僕は生まれつきのHSPですが、最初はちゃんと社会人として勤めることもでき、自殺願望はおろか、強迫観念や気分の落ち込みがずっと続く・・・ということはありませんでした。
しかし、HSPとして最も合わない職場で向かない仕事を無理に続けた結果、強迫観念や自殺願望が芽生え、うつ病に至ったのです。
つまり、HSPはうつ病のきっかけとはなりえますが、うつ病とはまったく違うものです。
うつ病とは?
ひとの脳は、こころやからだの働きを統括しており、意欲や気力、睡眠や食欲をコントロールしています。
うつ病は、この脳機能が疲れてバランスをくずしてしまう病気であると考えられています。脳のバランスを回復させる専門的な治療が必要になってきます。
うつ病は、「こころ」と「からだ」に様々な症状があらわれます。
うつ病は、「気分が重く沈みこむ」「何をやっても楽しくない」「生きていても辛いだけ」など、こころに症状(=精神症状)があらわれるだけでなく、「食欲がない」「疲れやすい」「よく眠れない」など、からだにも症状(=身体症状)があらわれてきます。出典:町田メンタル内科クリニックより一部引用
具体的には、2週間以上、毎日のように、ほとんど1日中ずっと憂うつであったり沈んだ気持ちであったり、ほとんどのことに興味がなくなっていたり、大抵いつもなら楽しめていたことが楽しめなくなった状態であり、
さらに睡眠に問題、自分に価値がないと感じたり、または罪の意識を感じたり、集中したり決断することが難しいと感じるなどの場合に、うつ病と診断されます。
HSPはあくまで「敏感な気質」ですので、これらとは違いますよね。
つまり、HSPの気質として、環境によって誘引となることはありえるけれど、うつ病とはまた違うもの、ということです。
HSPと強迫性障害(強迫神経症)との違いは?
強迫性障害とは、自己の意志に反して繰り返し執拗に湧き起こる思考「強迫観念」と、それを打ち消すための過剰な反復行動である「強迫行為」によって構成され、
時間を浪費して、日常生活や職業的、学業的、社会的な活動に著しい障害を来たします。適切な治療が行われないと病状は時間とともに進行していき、日常生活を送ることが困難になります。
出典:同町田メンタル内科クリニック
HSPのあるあるとして、とにかく細かいことが気になる、ささいなことが気になってしょうがないし落ち着かない、、、ということはよくあることだと思います。
僕自身は、HSPでありながら強迫性障害も持っています。
洋服の襟元が気になったり、洋服の材質がちょっとでもザラっと感じたら落ち着かなかったり、玄関の鍵を2回は最低確認したりというのは昔からあることでしたが、
病気になってからは、寝るときは必ず時計を3台用意して、しかもアラームの位置とアラームオンとなっているのかを眠る直前まで何度も何度も確認したりしています。
ガスの元栓や玄関のロックがとにかく気になって、何度も確認したのに、また確認しにいく・・・、水道の閉め忘れが気になって何度も確認したのに、また閉めにいく、、、
自転車のタイヤが気になって、何度も確認したのに空気をチェック。ひどい時には自転車の車輪が外れて壊れることばかり想像して乗ることさえできない始末。
とにかく、自分では「おかしい」と思いながらも、それが辞められないのです。
数字も気に入った数字意外だと落ち着かず、それ以外だと不幸になる気がする、何度も何度も数える、など日常生活にも支障をきたします。
HSPの敏感さとは違うところは、強迫性障害は「強迫観念または強迫行為のどちらかが存在し、強迫症状のため生活機能低下が生じている状態であること」です。
これはHSPの気質とは違い、脳内の神経伝達物質(セロトニン)に関連する脳機能の異常であり、本人の性格や意志の弱さの問題ではありません。
この辺は非常に難しいところですが、HSPであっても「強迫性」をもって苦しんでいなければ、それは気質として安心してよいものと言えると思います。
つまり、単純にいろいろ細かいことが気になる繊細さがある、というのがHSPであり、それが気になりすぎて落ち着かず、強迫的な行動に縛られているのが強迫性障害と言えそうです。
HSPと発達障害/ADHDの違いは?
同じく、発達障害(LD/ADHD/ASDなど)とHSPの違いについてもよく質問が出ます。
これについても、大きな違いがあります。
確かに刺激に敏感で、社会的行動から距離を取りがちである、という特徴などが、発達障害に似ているかもしれません。
しかし、HSPは正常な脳機能の「感覚の鋭さ」であり、一方の発達障害は脳機能に問題があり、「感覚の処理障害がある」状態とされます。
感情が高ぶるとか、落ち着かないなどの症状は似ていますが、これも専門の医師でさえ間違ってしまうほどの問題でもあるため、きちんとした医師の診察が必要です。
HSPと社会不安障害
そして、もっともHSPと関連があると思えるのが、この社会不安障害です。
上で見てきたように、HSPは病気ではありませんし、障害でもありません。
ただ、混雑が苦手だったり、人の眼が苦手だったり、監視が苦手だったり、傷つきやすかったり、そういうことが社会不安障害に似ているように感じることがあるかもしれません。
一方、社会不安障害は人前で話す、電話をする、食事をする、字を書くなどが極端に不安になり、日常に支障をきたす状態とされています。
僕自身、社会不安障害も持っているため、違いを書くのが非常に難しいのですが、
社会不安障害は本人の気質や、トラウマになるような失敗、また、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドパミンのバランスが崩れてしまうことで発症するものとされており、つまり、HSPという気質もその原因の一要因になりうる、ということです。
HSPであっても、人前で話すことが全然平気なセミナーの先生のような方もいらっしゃいますし、かのスティーブジョブスのようにむしろ人前であんなにも堂々としている方もHSPであった、という話があります。
つまり、HSPと社会不安障害はイコールの関係ではなく、HSPの人の中には社会不安障害を持つ人もいる、という考え方が正しいと思います。
まとめ
以上、見てきたように、「HSPだから私病気なんだ・・・」と思う必要はまったくなく、
一方で日常生活に支障をきたすほどに苦しんでいるのに、「ただのHSPだから大丈夫」と考えるべきでもないということです。
よくSNSやブログなどで見るHSP体験記には、上で見てきたような病気と混在して苦しんでいるのに、HSPの症状でしかない、と紹介されている方もいらっしゃいます。
しかし、それも危険なことで、HSP自体は病気ではないけれど、もしも日常が苦しいと感じているのなら、それはもう病院で医師に診察してもらうのが一番である、ということを念頭にしていただきたいと思います。
僕自身、HSPであることを知ったのは、うつ病の治療中のことでしたし、そこで初めて聞いて心が楽になったことも覚えています。
そして、うつ病・強迫性障害・社会不安障害を薬で治療しながら、HSPとして「なるべく自分をいたわる」生活を続けていけたらなと思っています。
今回は、HSPとうつ病などの病気との違いについて解説しました!やっぱりつらい環境に身を置く、というのは病のもとだと思います。HSPという気質とうまく付き合うことも僕の人生の大きなテーマです。
コメント
HSPとうつ病ってやっぱり全然違うけど、繊細だからこそうつ病にもなりやすい、というのはすごくよく分かります。。